相続税法改正について
平成23年度の相続税法改正について(※以下の一部のものにつき、平成27年度において改正されました。今後の改正は、「税務トピックス」のページへ順次掲載していきます。)
現在政府与党で進められている平成23年度の相続税法の改正案の内容は以下の通りです。
ただし、平成23年度の税制改正案は23年9月現在、国会で成立していません。
改正法案は
贈与税 → 23年1月1日から適用
相続税 → 23年4月1日から適用
となっていますが、4月において、国会で成立していないため、実施できません。
毎年の税制改正は3月31日の年度内に成立しますが、今年は震災の影響で復興のための支援策等が優先され、3月末までの成立が出来ませんでした。
税制改正案は改めて国会で審議されますが、ねじれ国会の影響等もあり、法案自体が成立するか今のところ不明です。
しかし、成立すると財産の額によってはかなりの増税となりますので注意が必要です。
(1)平成23年度の相続税に係る改正案の内容
(平成23年4月1日以後の相続又は遺贈に適用予定)
1. 基礎控除額の引き下げ(増税)
現行
5,000万円+1,000万円×法定相続人の数
↓
改正案 3,000万円+600万円×法定相続人の数
現行 | ⇒ | 改正案 | 差額 | ||
1人 | 6,000万円 | 1人 | 3,600万円 | 2,400万円 | |
2人 | 7,000万円 | 2人 | 4,200万円 | 2,800万円 | |
3人 | 8,000万円 | 3人 | 4,800万円 | 3,200万円 | |
4人 | 9,000万円 | 4人 | 5,400万円 | 3,600万円 | |
5人 | 10,000万円 | 5人 | 6,000万円 | 4,000万円 | |
6人 | 11,000万円 | 6人 | 6,600万円 | 4,400万円 | |
7人 | 12,000万円 | 7人 | 7,200万円 | 4,800万円 | |
8人 | 13,000万円 | 8人 | 7,800万円 | 5,200万円 | |
9人 | 14,000万円 | 9人 | 8,400万円 | 5,600万円 | |
10人 | 15,000万円 | 10人 | 9,000万円 | 6,000万円 |
<解説>
例えば相続人が3人であれば、現行は8,000万円の基礎控除があり、財産の額が8,000万円までは申告義務がありませんが、改正案が通るとこの金額が40%ダウンの4,800万円となり、3,200万円も下がります。
この改正により、従来相続税を申告しなくてよかった人が申告する義務が発生することとなり、また、相続税の負担も基礎控除額が減ることによりアップすることとなります。
2. 相続税率の見直し(増税)
従来
法定相続分の各相続人の取得価額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超 3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超 5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超 1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超 3億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 50% | 4,700万円 |
従来 → 一部増税
法定相続分の各相続人の取得価額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超 3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超 5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超 1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超 2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超 3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超 6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
<解説>
2億円以下については変更ありませんが、2億円超の財産の取得については税率が上がり、最高税率が50%から55%に上がります。
3. 死亡保険金に係る非課税の見直し(増税)
現行
500万円 × 法定相続人の数
↓
改正案
500万円 × 次のいずれかに該当する法定相続人の数
1. 未成年者
2. 障害者
3. 相続開始直前に被相続人と生計を一にしていた者 ※(注)
<解説>
生計を一にしていた相続人が少ないと非課税金額が少なくなることとなります。
例えば配偶者と子供2人の内、生計を一にしていた者が配偶者のみで子供は成年でかつ障害者でない場合、
現行
500万円×3人 =1,500万円 非課税
改正案
500万円×1人 = 500万円 非課税
と非課税金額が1,000万円少なくなり、その分相続税の負担が増えます。
※(注)生計を一にしていた者とは、同居していた者、または勤務・修学・療養等の都合で別居していて余暇に起居を共にしていたり、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われていた者をいいます。
4. 未成年者控除・障害者控除の見直し(減税)
現行 | 改正案 | |
未成年者控除 | 6万円×20歳に達するまでの年数 | 10万円×20歳に達するまでの年数 |
障害者控除 | 障害者控除 6万円(特別障害者12万円) ×85歳に達するまでの年数 | 10万円(特別障害者20万円) ×85歳に達するまでの年数 |
<解説>
未成年者控除と障害者控除については、控除額が増えますので、その分相続税は減税となります。
(2) 平成23年度の贈与税に係る改正案の内容
(平成23年1月1日以後の贈与について適用予定)
1. 20歳以上の直系卑属(子、孫、ひ孫)が贈与を受けた場合の贈与税率の引下げ
従来
基礎控除、配偶者控除の後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | - |
200万円超 300万円以下 | 15% | 10万円 |
300万円超 400万円以下 | 20% | 25万円 |
400万円超 600万円以下 | 30% | 65万円 |
600万円超 1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,000万円以下 | 50% | 225万円 |
↓
改正案
20歳以上の子・孫・ひ孫が受贈した場合
→ 一部減税、一部増税
基礎控除、配偶者控除の後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | - |
200万円超 300万円以下 | 15% | 10万円 |
300万円超 400万円以下 | 20% | 25万円 |
400万円超 600万円以下 | 30% | 65万円 |
600万円超 1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,000万円以下 | 50% | 225万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
<解説>
20歳以上の子供・孫・ひ孫が親等から財産の贈与を受けた場合の贈与税の率が一部引下げになります。
ただし、最高税率が50%から55%となっていますので4,500万円を超える贈与については増税となっています。
2. それ以外の者が贈与を受けた場合の贈与税率の引上げ
従来
基礎控除、配偶者控除の後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | - |
200万円超 300万円以下 | 15% | 10万円 |
300万円超 400万円以下 | 20% | 25万円 |
400万円超 600万円以下 | 30% | 65万円 |
600万円超 1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,000万円以下 | 50% | 225万円 |
↓
改正案
それ以外の者が受贈した場合 → 一部増税
基礎控除、配偶者控除の後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | - |
200万円超 300万円以下 | 15% | 10万円 |
300万円超 400万円以下 | 20% | 25万円 |
400万円超 600万円以下 | 30% | 65万円 |
600万円超 1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,000万円超 1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
1,500万円超 3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
<解説>
上記1. 以外の者が財産の贈与を受けた場合の贈与税の税率が一部引き上げとなります。
1,000万円超の財産の贈与の贈与税の税率が上がり、最高税率が50%から55%になります。
1,000万円以下の贈与については従来通りの税率です。
3. 相続時精算課税制度の対象者拡大
現行 | 改正案 | |
受贈者 | 20歳以上の子供 | 20歳以上の子供及び孫 |
贈与者 | 65歳以上の者 | 60歳以上の者 |
<解説>
相続時精算課税制度の受贈者に20歳以上の孫が追加され、贈与者も65歳から60歳以上に引下げられ、対象者が拡大されます。
ただし、20歳以上の孫の場合、代襲相続人でない場合、相続精算時に2割加算対象となります。