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相続税に関するお役立ちトピックス

 

空き家問題について

 

1.はじめに

現在、日本では空き家の増加が深刻な問題となっています。少子高齢化が進む中で総住宅数が総世帯数を上回り、住宅総数のうち実に13.6%が空き家となっています。(総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査」)これは7軒に1軒は空き家ということであり、決して他人事ではありません。

 

2.空き家のリスクと対策

空き家の増加が問題となるのは、空き家に伴う様々なリスクがあるためです。空き家に不審者が住み着いてしまうなどの治安面の悪化、空き家から出火した場合に発見が遅れてしまうこと、災害時に倒壊する恐れがあることなどが懸念されています。また、子供が入り込んでけがをしてしまう、空き家の庭木の枝が伸びて近隣に迷惑をかけてしまうなどした場合には、賠償責任は空き家の所有者が負う事になります。さらに、空き家であっても、固定資産税や火災保険代など維持費もかかってしまい所有者の負担も大きいです。
 この空き家問題の対策として、2015年には「空き家等対策などの推進に関する特別措置法」が施行され、地方自治体でも「空き家バンク」という空き家の売り手と買い手をマッチングする登録制度を設けて、空き家の解消に努めようとしていますが、増え続ける空き家の数に追い付いていないのが現状です。

 

3.空き家の譲渡所得の特別控除

税制面でも空き家の売却を進めるべく、平成28年に「空き家に係る譲渡所得の3000万円特別控除の特例」が創設されました。特に相続によって空き家となってしまった家屋を売却しやすくするのがねらいです。
 この制度は、相続日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日までに、被相続人の居住の用に供していた家屋を相続した相続人が、当該家屋(耐震性の条件を満たさない場合は耐震リフォームをしたものに限ります)又は、家屋取り壊し後の土地を譲渡した場合には、譲渡所得から3000万円を特別控除するというものです。

この制度を受けるためには次のような要件があります。
  (1)昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること。
  (2)被相続人が1人で住んでいた家屋であること。
  (3)相続開始から譲渡の時まで、居住や事業、賃貸などせずに空き家となっていること。
  (4)譲渡価額が1億円以下であること。
  (5)相続開始日から3年を経過する年の12月31日までに譲渡すること。
  (6)平成28年4月1日から令和5年(2023年)12月31日までに譲渡すること。
  (7)親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと。

 <譲渡所得の計算>
    譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 - 特別控除3000万円

  また平成31年度改正により、被相続人が老人ホーム等に入所していて、その家屋に居住していなかった場合も適用対象とされることになりました。被相続人が介護保険法に規定する要介護認定等を受け、相続開始直前まで老人ホーム等に入所していることと、その間、事業や賃貸、他の人の居住の用などに供されていないことが要件となります。この特例措置は、平成31年4月1日以後行う譲渡について、適用されます。また、適用期限も4年延長され、令和5年(2023年)12月31日までとなりました。

 

4.空き家の家族信託

空き家にしないための対策の一つに家族信託があります。家族信託を使えば、老親が入院や老人ホーム等へ入所したために空き家となった老親の自宅を、子供などの受託者が適切な時期と価格で売却できるようになるというメリットがあります。
具体的には、委託者と受益者を老親、受託者を子供として「信託契約」を結び、自宅の所有権を子供に移します。この所有権移転登記は形式的な譲渡であるため、通常の譲渡と異なり、不動産取得税や所得税、贈与税などはかかりません。「信託契約」により、子供は信託財産である自宅の売却、管理、契約などの権利を持つことができ、老親の判断能力が低下した後でも、自宅の売却などがスムーズにできます。また、受益者は老親のままであるため、自宅を売却した代金を親の介護などに使うこともできます。

 

5.まとめ

このような財産の管理や処分といった問題は、空き家だけではなく、様々な財産に及ぶ問題です。スムーズな財産移転ができるように、日頃から親子間でコミュニケーションを取って、相続後の財産の管理や処分などの話をしておくことが重要かと思います。

 

  (2019年7月記載)

 

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