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相続税に関するお役立ちトピックス

 

貸付事業用宅地等の3年縛りの経過措置の終了

 

(1)概要

 小規模宅地等の特例における貸付事業用宅地等につき、平成30年度改正において、相続開始前3年以内に新たに行った貸付事業が対象外となったが、経過措置として、平成30年3月31日以前から貸付が行われていた宅地等を平成30年4月1日から令和3年3月31日までに相続等で取得した場合はその3年縛りが適用されなかった。

つまり、令和3年4月1日以後に相続等で取得した貸付事業用宅地等で貸付期間が3年以内のものは小規模宅地等の特例の対象外となる。

 

(2)改正前の制度の概要

(イ)制度の仕組み

 個人が相続等で取得した財産のうちに、その相続の開始の直前において、その相続等に係る被相続人又はその被相続人と生計を一にしていたその被相続人の親族(以下「被相続人等」という。)の事業(準事業を含む。)の用等に供されていた宅地等で建物又は構築物の敷地の用に供されているもの(以下「特例対象宅地等」という。)がある場合には、その相続等により財産を取得した者に係る全ての特例対象宅地等のうち、その個人が取得をした特例対象宅地等又はその一部で本特例の適用を受けることを選択したもの(以下「選択特例対象宅地等」という。)については、限度面積要件を満たす場合のその選択特例対象宅地等(以下「小規模宅地等」という。)に限り、相続税の課税価格に算入すべき価額は、通常の方法によって評価した価額に、次に掲げる小規模宅地等の区分に応じ、それぞれに定める割合を乗じて計算した金額とする(旧措法69の4(1))。

 

・貸付事業用宅地等である小規模宅地等・・・50%

 

(注1)上記の「準事業」とは、事業と称するに至らない不動産の貸付けその他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行うものをいう(措令40の2(1))。

(注2)上記の「特例対象宅地等」のうち、貸付事業用宅地とは、具体的には、以下の宅地等をいうこととされている(措法69の4(3)、措令40の2(4)〜(12))。

 

・貸付事業用宅地等

 被相続人等の事業(不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業及び準事業に限る。以下「貸付事業」という。)の用に供されていた宅地等で、次に掲げる要件のいずれかを満たすその被相続人の親族が相続等により取得したもの(次に掲げる要件を満たす親族が相続等により取得した持分の割合に応ずる部分に限る。)をいう。

(A)その親族が、相続開始の時から申告期限までの問にその宅地等に係る被相続入の貸付事業を引き継ぎ、申告期限まで引き続きその宅地等を所有し、かつ、その貸付事業の用に供していること

(B)その親族がその被相続人と生計を一にしていた者であって、相続開始の時から申告期限まで引き続きその宅地等を所有し、かつ、相続開始前から申告期限まで引き続きその宅地等を自己の貸付事業の用に供していること

 

(3)改正の趣旨

 貸付事業用宅地等の軽減措置については、相続開始前に貸付用不動産を購入することにより金融資産を不動産に変換し、金融資産で保有する場合に比し、相続税評価額が圧縮され、かつ、小規模宅地等の特例も適用できるという節税策が雑誌などで盛んに紹介され、低金利も背景に賃貸アパートが増加する状況となっていた。特にタワーマンションでは、その減額効果が大きくなるといわれている。また、会計検査院による随時報告「租税特別措置(相続税関係)の適用状況等について」(平成29年11月)においては、申告期限経過後短期間で本特例の適用を受けた宅地等を譲渡している事例も多いこと、譲渡している事例のうち貸付用不動産が多数を占めることが指摘されていた。このような状況に対応するため、平成30年度税制改正では、相続開始前3年以内に貸付用不動産を取得した場合には、貸付事業用宅地等の特例は適用できないこととされた。ただし、3年以上継続的に事業的規模で不動産貸付けを営んでいる場合は、金融資産を不動産に変換して節税策を講じるものともいえないことから、適用対象から除外されない。

 

(4)改正の概要

(イ)貸付事業用宅地等の要件の見直し

上記(3)の問題に対応するため、相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供されたものが除かれた(措法69の4(3)四)。

ただし、相続開始の日まで3年を超えて引き続き準事業以外の貸付事業を行っていた被相続人等の貸付事業に供されたものは、この除外規定の対象外とされ、特例を適用することができる(措法69の4(3)四、措令40の2(16))。

(注)準事業とは事業と称するに至らない不動産の貸付けその他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行うものとされていることから、準事業以外の貸付事業とは事業と称することのできる規模での不動産の貸付けとなる。

 

(ロ)適用関係

激変緩和の観点から次の経過措置が講じられている

・貸付事業用宅地等に係る経過措置

 平成30年4月1日から令和3年3月31日までの問に相続又は遺贈により取得する宅地等については、上記2(4)(イ)のうち、「相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等」とあるのは、「平成30年4月1日以後に新たに貸付事業の用に供された宅地等」とされる(改正法附則118(4))。

すなわち、平成30年3月31目以前から貸し付けている宅地等については、上記2(4)(イ)の改正後の要件は適用されず、改正前の要件が適用される。

 

参照:財務省HP 

 

 (2021年4月記載)

 

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