【令和2年度税制改正】医業継続に係る贈与税・相続税の納税猶予制度等の改正
1 改正前の制度の概要
⑴ 贈与税の納税猶予及び税額控除
(措法70の7の9、1項の概要)
認定医療法人の持分を有する個人(以下「贈与者」という。)が当該持分の全部又は一部の放棄をしたことにより、当該認定医療法人の持分を有する他の個人(以下「受贈者」という。)に対して贈与税が課される場合には、当該受贈者の当該放棄があつた日の属する年分の贈与税で期限内申告書(以下「贈与税の申告書」という。)の提出により納付すべきものの額のうち、当該放棄により受けた利益(以下「経済的利益」という。)の価額で当該贈与税の申告書にこの項の規定の適用を受けようとする旨の記載があるものに係る納税猶予分の贈与税額に相当する贈与税については、政令で定めるところにより当該年分の贈与税の申告書の提出期限までに当該納税猶予分の贈与税額に相当する担保を提供した場合に限り、認定移行計画に記載された移行期限まで、その納税を猶予する。
(措法70の7の9、11項の概要)
第一項の規定の適用に係る認定医療法人の認定移行計画に記載された移行期限までに次の各号のいずれかに掲げる場合に該当することとなった場合には、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額に相当する贈与税は、免除する。
一 第一項の規定の適用を受ける受贈者が有している同項の規定の適用に係る認定医療法人の持分の全てを放棄した場合・・・納税猶予分の贈与税額(二号割愛)
(措法70の7の10、1項の概要)
認定医療法人の持分を有する個人(以下「贈与者」という。)が当該持分の全部又は一部の放棄をしたことにより、当該認定医療法人の持分を有する他の個人(以下「受贈者」という。)に対して贈与税が課される場合において、当該受贈者が当該放棄の時から当該放棄による経済的利益に係る贈与税の申告書の提出期限までの間にその有する当該認定医療法人の持分の全部又は一部を放棄したときは、当該受贈者については、通常の計算により計算した金額から放棄相当贈与税額を控除した残額をもつて、その納付すべき贈与税額とする。
(2)相続税の納税猶予及び税額控除
(措法70の7の12、1項の概要)
個人が経過措置医療法人の持分を有していた他の個人から相続又は遺贈により当該経過措置医療法人の持分を取得した場合において、当該経過措置医療法人が当該相続に係る期限内申告書の提出期限において認定医療法人であるときは、当該相続人等が当該相続税の申告書の提出により納付すべき相続税の額のうち、当該持分の価額で当該相続税の申告書にこの項の規定の適用を受けようとする旨の記載があるものに係る納税猶予分の相続税額に相当する相続税については、政令で定めるところにより当該相続税の申告書の提出期限までに当該納税猶予分の相続税額に相当する担保を提供した場合に限り、認定移行計画に記載された移行期限まで、その納税を猶予する。
(措法70の7の13、1項の概要)
個人(以下「相続人等」という。)が経過措置医療法人の持分を有していた他の個人から相続又は遺贈により当該経過措置医療法人の持分を取得した場合において、当該経過措置医療法人が当該相続の開始の時において認定医療法人(当該相続に係る相続税の申告書の提出期限又は平成三十二年九月三十日のいずれか早い日までに厚生労働大臣認定を受けた経過措置医療法人を含む。)であり、かつ、当該持分を取得した相続人等が当該相続の開始の時から当該相続に係る相続税の申告書の提出期限までの間にその有する当該経過措置医療法人で厚生労働大臣認定を受けたものの持分の全部又は一部を財務省令で定めるところにより放棄したときは、当該相続人等については、通常の計算による相続税額から放棄相当相続税額を控除した残額をもつて、その納付すべき相続税額とする。
(3)贈与税の課税の特例
(措法70の7の13、1項の概要)
認定医療法人の持分を有する個人が当該持分の全部又は一部の放棄(当該認定医療法人がその移行期限までに新医療法人への移行をする場合における当該移行の基因となる放棄に限るものとし、当該個人の遺言による放棄を除く。)をしたことにより当該認定医療法人が経済的利益を受けた場合であっても、当該認定医療法人が受けた当該経済的利益については、贈与税は課税されない。
2 改正の内容
(1) 認定期限の延長
平成18年の医療法の改正により、医療法人の非営利性の徹底と地域医療の安定性の確保のため、持分なし医療法人でないと設立が認められないこととなった。
また、法改正前に設立されていた持分あり医療法人については、持分なし医療法人への円滑な移行を促進しており、平成26年度には持分なし医療法人への移行計画の認定制度が創設され、持分なし医療法人へ移行しようとする医療法人の支援策が講じられているところである。
本制度は、上記 1 のとおり、持分なし医療法人への移行の準備を進めている持分あり医療法人において、出資者の死亡により相続が発生することなどがあっても、相続税の支払いのために相続人から法人への相続持分の払戻し請求等を受けて移行計画の達成に支障が生じることのないよう、相続税等の猶予等を行うものであり、円滑な移行促進のための税制上の支援措置となっている。
持分あり医療法人は依然として約 4 万法人あり、引き続き、持分なし医療法人への移行を促進する必要性に鑑み、本制度の対象となる認定医療法人の認定期限が令和5年9月30日まで3年延長された(措法70の 7 の 9 (1)、70の 7の10(1)、70の 7 の11(2)、70の 7 の12(1)、70の 7の13(1)、70の 7 の14(1))。
(2) 手続きの簡素化
持分なし医療法人への移行に際して定款変更の認可を2回受ける必要があったが、実態として、 1 回目の定款変更から2回目の定款変更まで短期間で手続きを終える医療法人が多く、二度手間となっている状況であった。こうしたことから、 1 回目の定款変更の認可及び報告については、省略することとされた(医療法施行規則57、59、60)。
3 適用関係
上記の改正は、令和 2 年 4 月 1 日から施行される(改正法附則 1 、医療法施行規則の一部を改正する省令附則 1 )。
【参照】財務省HP
(2020年4月記載)
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